広島経済同友会
 
同友会とは
組織図
事業計画
予定表
委員会活動
各支部活動
講演会
きすう会
提言・報告
会報
規約
会員募集
会員ページ
リンク集



Counter

 

前へ きすう会トップへ 次へ

1.きすう会からのメッセージ
「広島県の人口減を考える」

はじめに

 今、広島都市圏はかつて不動のものであった「中四国の中枢都市」としての自信を喪失しかけている。穏やかな気候風土に育まれた広島人は哀しい歴史から学んだ世界でもっともやさしい性格のためか、存在そのものがエネルギッシュでありヒト・モノづくりの玉手箱でもあった大学、世界の「トウキョウ」とダイレクトに結ばれる空港を近郊都市に献上することで「都市の空洞化」を自ら促進してしまった。

 しかしながらそのような失敗をいまさら悔やんでいる場合ではない。かつてわが広島経済同友会が提唱したグレーター広島構想(平成元年1月)では広島市を含め周辺の7市32町を新たな広島都市圏域とし、その「グレーター広島」の中にそれら都市機能施設を飲み込めばこのような不安定な状態は解決するであろうと提唱した。この提言からすでに15年が経過し、高速道路網の整備は都市間の移動距離を大幅に短縮した。また郊外に転出した広島大学は夜間主コースの残る東千田キャンパスを拡充し社会人の大学院生を受け入れるなど広島都市圏を意識した産学官連携の拠点となりつつある。商業機能の充実は目覚しく大型複合施設は都心部及びその周辺の工場跡地などがにぎわい施設として魅力を高めている。また都市の格付けや奥の深さを規定するといわれる野球・サッカーなどプロスポーツの充実や、広島交響楽団、美術館など文化芸術面でも広島発信の話題に事欠かないのである。

 広島都市圏は広島県全体にとって紛うことなき中核都市であり、更に市町村合併の次にくる道州制をにらむとき、中四国の中枢都市として自信を回復せねばならない。そして今こそ中四国随一の州都として不動の地位を築かねばならない。世界的に知名度の高い「ヒロシマ」という暗い都市像を昇華し、ヒト・モノづくりを基盤とし高度な知的サービス産業の集積した魅力的な都市「ひろしま」を作り出すために、我々は立ち止まるわけにはいかないのであるから。

1999年に設立され早や5年を迎えようとする広島経済同友会「きすう会」は広島都市圏の活力創出のためには人口増加が不可避であるという認識に立ち、どうすれば2006年から突入するといわれている人口減少の流れの中で「一人勝ち」できるのか−人口の自然増、人口の社会増、交流人口増−の3つの切り口から、提言する。


(1) 人口の自然増加を目指して
 かつて不幸な時代に提唱された「産めよ増やせよ」という標語は、国力維持のために意図的に流布された観がある。しかしながら合計特殊出生率が1.35人という最低記録を更新する今、改めてその言葉の重みを感じざるをえない。
 どの時代にあっても次の新しい時代を切り開くのは若者である。その存在自体、またかたまりとしてのパワーは我々の計り知れないものがあることを忘れてはならない。


 1.若者の結婚観の再転換−結婚の勧め  
 女性の結婚についての行動は大きく変化している。20代後半の女性の未婚率は1975年の20.9%から2000年の54.3%へと約2.6倍になっている(国勢調査)。男性も同様に48.3%から69.6%になり、未婚の男女が確実に増えている。
 しかしながら一生独身でいるのかというとそうではなく「結婚を遅らせる=晩婚化」が進んでいるのである。
 厚生労働省の「人口動態調査」によると1910年に平均初婚年齢は男性27.0歳、女性23.0歳であったものが2000年では男性28.8歳、女性27.0歳へと上がっている。特に女性の上げ幅が大きいのが目に付く。更に初婚年齢は高学歴ほど、職業では専門職、管理職などで高くなっている。また従来「結婚適齢期」といっていたものが20台から40代あたりまでに拡散してきており「結婚したいときが適齢期」という時代になりつつある。このように結婚に対する若者の意識が変わってきたが何らかの是正が必要であろう。
 今日、「孤独な群集」といわれる多くの若者がただ無目的に時間を街角で過ごしたりネット上で「自殺者」を募り見知らぬもの同士が心中する状況がある一方、「癒し」と称してペットを飼ったり香りを楽しむなど表層的なまぎらわしが浸透している。しかし乱暴な言い方をするならば「早く結婚し、家庭を持ち家族の支えあいや温かみを実感することが最大の癒しである」ことに気づいて欲しい。

 
 2.若者の労働意識、雇用者のローコスト意識の変革
 今日若者の就職率が急速に低下してきている。未曾有の構造不況から新規採用が絞られる反面団塊世代ジュニアが就職適齢期にいるため需給バランスが取れていないことが要因と考えられる。しかし、若者の就職(長期安定)意識も急速に薄れ責任ある仕事につきたくないというフリーター志向が高いことも原因と推定される。このように長期安定した就業が見通せない限り「結婚して家庭を持つ」ということ現実的に無理であることも多い。
 まずは若い世代が就業意欲を回復し、しんぼうと我慢する粘り、採用時の新入社員教育で電話の応対や手紙の書き方などの再教育を企業が行う必要がない程度の基本的なマナーは家庭や学校等での実践を通じて身につけるべきであろう。同時に進んで責任ある仕事を選び、社会の中で複雑な人間関係などにもまれながらも成長していく「社会人」としての自覚など若い世代の職業意識の再変革が求められていよう。
 一方、ローコストオペレーションの名の下に派遣社員やパート労働者の採用に走る経済界にも反省が必要であり、積極的に若者の就業機会の確保を増やすべきだ。


 3.適齢者への結婚促進税制の導入−パラサイトシングルからの脱皮・自立
 不自然な結婚観の押付けは効果的ではないが、「早く結婚して幸せな家庭を作る」という良識ある結婚観の醸成は、「孤独な群集」といわれ街に集中たむろする若者たちに今もっとも必要と思われる。
 同時に、学校を卒業し親元から職場に通ういわゆる「パラサイトシングル(親元に寄生する独身者)症候群」は一面では「堅調な個人消費の重要なけん引役」として景気下支えの貴重な存在ではあるが、本来の姿から言えば適齢期になれば早期に結婚し家庭を持ち、子育てをしながら親の面倒も見るという「サザエさん」的な家族意識へ自然に誘導する環境作りが必要であろう。そのためには、親の子離れ(夫婦の「かすがい」からの解放)のための意識改革や独身パラサイト時代は一時的に税負担が重くなり、結婚・出産すれば減税または税還付となるような「結婚促進税制」の導入なども検討する時期にあると思われる。


 4.子育て支援策の充実・推進−子供をたくさん産み育てられる環境整備
 不幸にして子供が授からない家庭がある一方、生みたいけれど住宅事情や経済的理由などからたくさん生み育てられない家庭も多い。子は本来その親の私物ではなく、社会や国の貴重な財産であるという側面もある。したがってどの子も本来は地域や社会全体で等しく手厚く面倒を見る必要がある。このため今日では働く親のための子育て支援や家賃補助など様々な公的施策がとられている。先進地域では親の所得制限に関係なく子供の医療費無料化や、美術館など文化施設での子供の入場料を無料化するなどの取り組みも見られる。広島都市圏にあっても「日本一住みやすい」都市として高齢者偏重から少子化対策にシフトし実際のニーズにあった一層の子育て支援策が望まれる。
 同時に我々経済界、企業にあっても育児休暇の消化や年齢給から実績能力などに力点が置かれた賃金制度への転換、育児手当などの充実などが積極的に求められている。さらに今日的な子育て支援として男性の育児・家事・介護分担を進めるため「ノー残業デー(早期退社)」を設定し女性の家事育児負担を軽減しようとする試みも始まっている。自分の会社でできるところから、何かを進めることが求められている。


 5.高齢者から次世代へ富の再配分

 わが国において現在の「手厚い高齢者偏重施策」は年金の破綻を予想させ介護保険・健康保険など実質的な生産年齢世代の負担を増加させているのは混じれもない事実である。またリストラや企業の集散に伴う雇用不安などは出産・育児などの心理的抵抗となり未来ある生活や生涯設計そのものを描けないなど我々を直撃している。このように高齢者に対する負担軽減の施策に比較して「少子化対策、子育て支援」に対する施策はお粗末限りない。今日もっとも恵まれた高齢者にあっては、老後の手厚い公的保障の代償の見返りに次世代のための「富の供出・再配分」という見地から行われるべき高齢者の税、医療費などの負担増に理解を示される見識の高さと英断を望みたい。

 
 (2) 人口の社会増(転入超過)を目指して


 1.新たな産業の育成−高度な知的サービス産業等の増殖
 広島県、広島市の人口動態を見ると15歳から24歳を中心に「人口の社会減(転出超過)」が続いている。その理由別では転勤に次いで就学があげられている。広島で高校まで出ると県外の学校へ転出するケースが想定される。昨今の不況下でこの現象は一時的には減少するものと思われるが、上位教育機関に進んだ後に就職で広島に戻るかということが問題である。せっかくの最先端の学術取得や貴重な経験が活かせるような雇用の場が確保されないためやむなく大都市圏で就業する事例は身近にも多い。このためには最先端技術や知識集約型企業の誘致などが不可欠であり、また高度知識集約型産業の創業支援など公的支援が望まれる。たとえば広島市では隔年で「国際アニメーションフェスティバル」が開催されている。このコンペティションは世界各地のアニメーション製作家やプロダクションなど「その筋」からは高い評価を得ているものの、肝心の我々市民レベルではその難易性と閉鎖性から必ずしも評価は高くない。しかしながらわが国アニメーション産業は世界最高水準であり今後も育成支援するに値する重要な産業である。したがって当地にあっては単にイベントの開催にとどまらずアニメーションに関する製作技術の集積、人材の投入と育成、関連する情報産業の誘致などハード・ソフト両面で広島発世界産業として支援していくことが必要であろう。


 2.教育県広島の復活
 現在、他都市から広島都市圏への転勤に際しては、単身での赴任が圧倒的に多いものと推定される。これは転勤の期間が平均2年前後であり今日の受験体制化では学校の編入学に伴うストレス回避が一因と思われる。同時にかつて「教育県」といわれた広島の公教育の水準が全国レベルから見て低いことも原因の一つと思われる。遅ればせながら中高一貫教育の導入や文科省によるスーパーサイエンスハイスクールの選定(県立国泰寺高校、広島大学付属高校)などによりようやく学力向上が目に見える形で現れてきつつあるが、全般的にはまだまだ「私学偏重」の域を出ていない。教育にコストがかかることが少子化の原因の一つとするならば、どこでも等しく享受できる公教育において学力レベルの向上を図ることが必要である。「教育特区」など地域ニーズにかなった取り組みに期待したい。
 一方、教育の現場ではおよそ民間企業では考えられないような組織体制や権限付与の不十分な実態が垣間見られるのは残念である。学校管理者、教員にあっては生徒,PTAなどによる「顧客満足度評価」の導入やスキルアップ、民間人からの登用校長などが大幅に権限を委譲されて各地に増えることにより、学力向上が進むことを望みたい。幸いにも経済同友会会員の中には教育関係の公職やPTA役員・評議員などに就任しているものが多くおり、また教員採用に際しての面接への協力、さらに教員の企業研修の受け入れなどを行ってきている。これらを通じて学校教育に積極的に関わり「広島に転勤するときには家族みんな一緒で来たくなる」ような魅力づくりと学力向上に取組むことが必要であろう。


 (3) 交流人口の増加を目指して

 1.被爆都市ヒロシマからの脱皮
 広島が世界最初の被爆都市としてその体験に根ざした悲惨さを訴えても、イラク戦争の実相を前にして、もはや今日の世界の人々の心を打つことはできないのではなかろうか。「怒りのヒロシマ、祈りの長崎」と称されるようにヒロシマは慰霊碑前の座り込みや被爆の実相を伝える遺品の展示などに安住し「広島に来るのが当然」であるかのように振舞ってきたといっても過言ではない。
 世界遺産に登録されている原爆ドームは国内外を問わず戦後55年間世界平和と戦争反対の警鐘としてその姿をさらしてきた。しかしながらこれからも引きつづき広島のランドマークでいいのであろうか。一日のはじまりに見るテレビでは広島に画面が切り替わるたび原爆ドームと平和公園が当然のように映し出される。届いた新聞を繰るとカタカナのヒロシマでの反戦平和の取り組みがことさら強調される紙面などを目の当たりにするとき、違和感を覚えるのはタブーであろうか。市民はいつのまにか正常なバランス感覚を麻痺させメディア関係者も「広島=ヒロシマ」という短絡にまったく疑問を抱かない。広島は水と緑と光と風の満たされた快適な都市空間である。製造業が空洞化していく中で広島の発展を考えるとき、どうしても外から人が集まる工夫や仕掛けとそのための都市イメージの一大転換が避けて通れない。もはや我々自身から被爆都市ヒロシマをことさら前面に出すことは都市間競争激化の中での交流人口増加という都市戦略としては間違いであろう。
 また、行政をからめた「水の都ひろしま」構想なども動き出しているが、原爆ドームを上回る広島の新たな平和のランドマークづくりの取り組みも始めねばならない。


 2.「こころのこもったもてなし」のためのハード整備

 戦前は広島のもっともにぎやかな地域であった一体が「平和公園」として整備され、その巨大なスペースは都市の中心にあってその東西南北を分断し、聖地であるがゆえに歌舞音曲などコンサート一つ満足に開けない。さらに驚くことに車製造が主要な産業である都市にもかかわらず、平和公園や原爆資料館への来訪者には無料駐車場が整備されていない。隣接する地区の有料駐車場は、その看板設置が景観上規制されるなどして観光客にはその存在そのものがわかりにくいと不評である。もう一つの被爆都市長崎市の平和公園には地下駐車場が設置され、来場者に配慮しているのとは好対照である。修学旅行シーズンには公園内広場に観光バスが列をなして停車し、歩行者用の石畳はその乗り入れで無残にも割れ果てている様は広島市民として忸怩たる思いを抱くのは我々だけではあるまい。
 交流人口増加の切り札としてこれから進められるべきである「観光都市ひろしま」作りにあっては、「陸海空の立派な玄関口」が整備された今、次いで求められているのは「居間、茶の間」作りである。


 3.「こころのこもったもてなし」に向けたソフト面の取組み

 平和を「戦争がないこと」をもって定義付けるのでは広島の求める都市像としては説明できない。当会高橋アドバイザーがいわれる「広島駅に観光客が荷物を忘れても、後で取りに戻ればそのまま置いてあった」ということも、広島が主張する平和の一つの象徴的な事実であろう。再び来たくなるようなタクシー運転手の接客対応、広島らしい食の提供やおもてなしの心で広島のいい所をアピールすることなども必要だ。
 全国的にも画期的といわれたが広島市民や町内会、商店街が行政を巻き込んで暴走族の集会を締め出す条例の制定や地道な見回り運動などはまさに広島の新たな「作り出す平和」の街づくりそのものであろう。フラワーフェスティバルで昨年から始まった「きんさいよさこい」はその後市民総踊りとして広がりを見せる。その中にはかつて暴走族であった若者と更正を支援するNGOの姿も見られるが、このような若者のひたむきなエネルギーを収束させ新たに発散させるような「燃える祭り」の復活もすぐそこまで来ている。


 最後にきすう会は、平成14年度特別に組織され、平成15年度より正式な委員会となる1500万人委員会をサポートし、広島ウイークスなど都市型観光を具体的に実践するための行事等を引き続き支援協力していくつもりである。
 また、広島県を考える委員会は、「ストップ!ザ 広島県の人口減」を平成15年度のテーマとして、人口の自然増加に向けた意識調査など積極的に調査研究を行い提言をまとめる予定である。  
 
   

文責:きすう会世話人・森信