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岐路に立つ日本とマツダ
〜輝きを取り戻すマツダ

マツダ マーク・フィールズ社長 講演 要旨
2001・11・21 広島全日空ホテル


マツダスピリッツの復活を目指して

 広島経済同友会は尊敬している会であり、きびしい経営環境の中でお互いリーダーとして話せることを大変楽しみにしていました。

 マツダは小さなコルク製品メーカーとして1920年に創業、81年の永い歴史をもつ会社です。今日では商用車・乗用車のグローバルメーカーで、世界130カ国以上で販売し、優れた技術の伝統、すばらしい革新的商品、先進技術を誇っています。

 かつては、「他メーカーと大胆に区別化する」、「ありきたりより、従来にないやり方」がマツダの伝統でした。その例がマツダロードスターで、1989年の生産開始以来累計生産台数が50万台を超え、「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」として、昨年ギネスの認定を受けたことです。

 また、マツダといえばロータリーエンジンです。1967年に発表した最初のロータリーエンジン搭載クーペが初めでした。私達のロータリーエンジンは、デイトナなどの主要なレースで優勝。さらに1991年、ル・マン24時間耐久レースで優勝するという偉業を成し遂げました。日本車で唯一のル・マン優勝であるとともに、マツダ787Bはその最高の栄誉を勝ち取った世界初のロータリーエンジン車となりました。

 しかし、この5〜10年で会社として前進をしながらも、いくつか間違った行動もとってしまいました。その中でも大きな間違いの1つは、マツダスピリットを見失ったことです。私達は市場の中心、つまりデザイン、エンジニアリング、マーケティングに関して、「より無難な」領域に向かってしまったのです。そのためマツダは成功の原動力から遠ざかり、他のメーカーの土俵で競争し始めてしまったのです。トヨタが何かやれば追従する。日産がやれば我々もやる。これは負けの戦略です。 

 私たちは、これに強い歯止めをかけてきました。現在、私達の戦略は、他のどの自動車メーカーとも競わず、私達のルーツヘ戻ることで、これまでマツダが常に成功してきたやり方で成功するつもりです。他人の土俵ではなく、自分達の土俵で競うのです。

変革にはリーダーが必要

 いま日本の制度や文化は、否応無しに、大きな変化に遭遇しつつあります。これまでの制度や文化に新しい生命や活力を吹き込む変化です。そして、今の日本でビジネスを行なっている西洋人として、私もこの変化の一部であると信じています。

 しかし、今から10年か20年後には、日本は過去の最良のものをベースにした、より強力な国に発展しているでしょう。そして、その基になるのは間違いなく今再び活力を得ようとしている現在の日本なのです。
 世界はじっと立っている訳ではありません。電光石火の速さで変化しています。すばやい変化に対応出来る企業が生き残り、旧いやり方に執着する企業は生き残れません。

 日本は再び変化する必要に迫られています。警告の兆しは表われています。マーク・フィールズが、皆さんの前で「変革が必要だ」と言っているだけではないのです。ワ一ルド・エコノミックフォーラム2000の調査によると、日本は地球規模での競争力において21位にランクされ(14位から後退)、経済の創造力においては20位となっています。

 ゴールドマン・サックスのへンリーM.ポールソン最高経営責任者(CEO)は、昨年日本でこう述べました。

「今日、どのビジネスにとっても死を意味するのは『現状維持』という言葉です。将来を方向づけるか、将来に押しつぶされるかなのです。それが我々にとっての明確で厳しい選択なのです。」と。

 過去危機に直面した時も、日本の人々は常に切り抜けてきました。ポールソンも言っているように、日本の人々と日本の企業は、彼らが競争しそして勝つことができるという事を何度も示してきました。日本は起業家不足に悩まされているのではなく、起業家が活躍できる環境に恵まれていないだけ」なのです。

 マツダでは、その「起業家が活躍できる」環境造りをしています。何故なら、21世紀のチャレンジに必要なのは人材であるということを私達は知っているからです。 

 ここでのチャレンジは、単なる「改善」ではなく「改革」なのです。それは従来の延長線上の変化ではなく、「変革」なのです。それは、変革を実行に移す有能なリーダーがいる場合にのみ成功可能なのです。

厳しい選択の実施

 リーダーの第一の責任は「現実」を定義することです。その事に関しては、去年、私達はマツダのありのままの現実として、「変革か死か」というテーマを採用しました。そして、マツダは断固として応えてくれ、現在マツダ中を席捲している変革は、まだその途上にあります。

 2001年は、マツダの歴史上変革の要となる年でした。数多くの要因から、この年3月期の決算は記録的な損失(13億ドル約1500億円)となりました。私達は、直面する以下の幾つかの重要な課題に対処するために、大胆な施策を採っています。

それらの課題とは、
 ○為替変動の影響を受け易い当社の体質(当社の愉出比率が60%以上に達しているため)
 ○9月11日の悲劇以降の自動車需要の冷え込み
 ○増々困難で厳しくなる競争
 ○(特にユーロに対しての)急激な円高
 ○競争力を強化するためのダウンサイジングの必要性
 ○IT革命
 ○顧客の要望の素早い変化、
などです。

 マツダは昨年の第四半期にミレ二アムプランを認定しました。これは「厳しい選択」で、困難ではありますが、私達の競争力を高めるために絶対的に不可欠な施策です。

具体的には以下の、
 ○広島の宇品第二工場を閉鎖。これで年間生産能力を25%削減しました
 ○フォードと共同で欧州生産拠点を設定。2003年にスペイン、バレンシアのフォード工場で乗用車の生産を開始する計画で、これより為替変動の影響を大幅に低減する。
 ○今年3月に完結した早期退職プログラムによる社員20%以上の削減。
 ○今後5年間に新商品に投入する費用を過去5年間に比べて30%増額。国内で16、北米で11、欧州で9車種の新型車を投入計画。
 ○マツダブランドを強化、育成できる立派になるため、ヨーロッパ(英、仏、独)での全販売の70%を占める重要市場で、マツダ車のディストリビューションの権利を取得、などです

今は「雌伏」、そして10年後のマツダは

 2001年、マツダにおける私のスローガンは「輝きを取り戻そう」です。私達はミレニアムプランのあらゆる目標を達成に向け計画通りに進捗しており、2001年度の上半期の決算では、ほとんどの財務目標を上回りました。2001年度の通期業績は、この悪影響に関わらず、我々は単独、連結ともに通期の利益黒字を予想しています。

 現在のマツダ全体に溢れつつあるエネルギーをうまく表現するのにふさわしい、すばらしい日本語を習いました。「雌伏」という言葉です。「大きな飛躍に備えで構えている状態」を意味する熟語です。「雌伏」は、マツダの現在の状態をそのまま表しています。現在取り組んでいるすべての事が将来の基礎となるのです。そのエネルギーが弾け、私たちが、とてつもない大躍進を遂げる姿を皆様にお届けできる日は遠くありません。

 10年後のマツダの姿をお話します。

 マツダは、憧れをかき立てる商品のメーカー、販売者として、名をはせるでしょう。

 10年後には、マツダは、生き生きとした人間性を備えたハイテク搭載の商品を得意とするメーカーとして知られているでしょう。
10年後には、マツダは、お客様に隙のないサービスを提供し、顧客満足度で先頭を行くメーカーになっているでしょう。

 10年後には、マツダは、車に搭載する技術の素早い導入で業界の先頭にいるでしよう。
 今後10年以内にマツダの全体像の最も明確な指標は、マツダの社員になるでしょう。そのため、今日マツダのチームに集めているのは、強いお客様志向の姿勢をもち、常にアンテナを張り、お客様の周波数にチャンネルを合わせて、外からのインプットを常に探し求める人たちです。

 また、社内に情報を行き渡らせ、技術とインターネットによって、「思考の速度で業務が行える」ようチームを編成しています。十分な情報を持つことにより、社員は、業務上の意思決定をしやすくなることを意味します。これで部門間の壁がなくなり、よりフラットな、更に好ましいことには、一層ウエッブのような組織に近づきます。要するに、これはマツダスピリットの伝統と見事に調和した企業文化を意味します。

 マツダは引き続き、日本におけるフォードグループの一員であるでしょう。日本の競合他メーカーは日本国外でもフォードに極めて大きな影響を与えるため、これらのメーカーの日本国内での動向に通じておくことができる、という点で重要なのです。フォードは、マツダをフォードグループ用の前輪駆動中型車のプラットフォーム開発における、グローバル・センター・オブ・エクセレンス(世界での開発の中心基地)として、また新しい大型4気筒エンジン開発のセンター・オブ・エクセレントとして位置付けています。

もう一度空高く舞い上がる

 現在の話に戻りますと、私たちは先月の東京モーターショーで2台の新しいモデルを紹介しました。「マツダRX−8」と「アテンザ」です。マツダのブランドメッセージは、今年の東京モーターショーでのテーマ「Zoom Zoom」に込められています。子供が英語で車のエンジン音をまねる時この言葉を使います。これは子供の時に初めて見た動くものに対するわくわくする気持ちを表しています。両モデルともマツダブランドの個性のエッセンスであるZoom Zoomを具現化しています。

 私達にとって非常に厳しく挑戦の年である2001年の終わりになって、明るいマツダの将来を予測していることは非現実的でしょうか?私はそうは思いません。マツダはもう一度空高く舞い上がります。

現在と未来に足を置いて

 この痛みを伴う変車の時期にマツダを率いている私の経験から得られた重要なことは、「リーダーは2本の足で立たなければならない」ということです。1本の足は現在に置き、もう1本の足は未来に置かなければならない。今日の成功がなければ、明日成功することはないのです。

 リーダーシップとは将来のあるべき姿を定義し、人々にそのビジョンを理解させ、それが実現するように彼らを鼓舞することです。私達は今マツダでそれを行っています。

 有能なリーダーとしての重要な資質とは、短期的なことと長期的なことに同時に注力できることだと思います。

 私達は、将来の有るべき姿を目指して、本当の意味での基礎を築き上げているところです。つまりマツダのブランド再構築を行っているところです。そして、それは我々の目指す将来への道に、我々の新商品のタイヤがぴったりと食いつくように目標は達成されるでしょう。今、我々の新商品はまさに着々と完成に向けて出来あがりつつあります。マツダは輝きをとりもどしつつあります。ご静聴ありがとうございました。(文責 事務局)